夜尿症について
- 夜尿症の外来は「完全予約制」です、受診希望の方は必ず「電話」で予約をお願いいたします。
「夜尿症のお子さんに絶対にしてはいけないことは何でしょうか?親が子どもを叱る事と、夜間睡眠中に起こす事の2点です。」
令和2年の医師国家試験に『5歳児の夜尿症』が出題されました、まずはこの問題をご覧ください。
- 問題
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5歳の男児。夜尿を主訴に父親に連れられて来院した。毎晩夜尿があり、これまでに夜間おむつがとれたことがない。日中の尿失禁はないという。
尿所見:比重1.030、蛋白(−)、糖(−)、潜血(−)、沈渣は赤血球0〜1/毎視野、白血球1〜4/毎視野。超音波検査で両側の腎と膀胱に異常を認めない。
夜尿症のお子さんへの生活指導として間違いはどれでしょうか?
a 「就寝前に完全に排尿させましょう」
b 「睡眠中の冷えから身体を守りましょう」
c 「水分は昼過ぎまでに多めに摂らせましょう」
d 「おねしょをしても叱らないようにしましょう」
e 「夜間の決めた時間に起こして排尿させましょう」(第114回医師国家試験、F‐38より、一部改変)
- 解説
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5歳男児の夜尿症(おねしょ)の相談です。子どものほとんどは3歳頃に昼間のおむつがとれ、夜尿も徐々にみられなくなります。夜尿は一般に成長とともに自然に治癒していきますが、適切な介入と援助により改善や治癒が早まることが知られています、本問ではそうした夜尿症をもつお子さんへの生活指導全般についての問題でした。 では、選択肢を1つずつ解説していきます。
○ a 就寝前に排尿させると夜間の尿量が減少し夜尿の改善が期待できます。
○ b 睡眠中の冷え、寒さは夜間の尿量の増加と膀胱の容量の低下をきたし、夜尿症は悪化します。
○ c 水分は昼過ぎまでに多めに摂らせ、夕方から水分制限をすると夜間の尿量が減少し、夜尿症が改善します。
○ d 夜尿は睡眠中の出来事なので、覚醒時に叱っても子どもの自尊感情を悪化させるだけで逆効果です。
× e 睡眠中に起こして排尿させると一見、その晩の夜尿はみられなくなりますが、尿の濃縮力を高めて夜間の尿量を減少させる抗利尿ホルモンの分泌を低下させます。そのため、夜間の尿量は増加するので、夜中に無理に起こして排尿させると、真の夜尿症は悪化します。よって正解(間違いである選択肢)はeとなります。
夜尿症とは、「5歳を過ぎて週に2回以上の頻度で、少なくとも3 か月以上連続して夜間睡眠中に夜尿を認めるもの」と定義されます。その有病率は5 歳児で20% もあり、その後は1
年ごとに15%ずつ自然治癒していくが、0.5% 程度は中学生までキャリーオーバーします。治療すると平均2 年早く治癒するので、患者数も多く重要な疾患です。
夜尿症の主な病因は、『遺伝的素因を基盤に、尿意による覚醒障害に加えて、夜間多尿、排尿筋の過活動のいずれか、または両者による夜間の尿量と就寝中の膀胱容量のミスマッチ』とされます。
当院での夜尿症の治療は、①お子さんの夜尿症に対する科学的な類型診断を基に、タイプ別の生活指導を行い、さらに②本人や家族の意思を確認して、診断に基づく薬物治療とアラーム治療を開始します。当院のカルテ検討によると、当院での治療開始後1年間で、9割の患者さんに改善を認め、3人に1人が治癒しております。
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